幼稚園選びには、当時かなり力を入れていました。
せっかく通わせるなら、教育に熱心な幼稚園がいい。
そう考えて選んだ幼稚園は、音楽や表現活動にも力を入れていました。
年長さんになると、有名な映画音楽などを合奏すると聞いていました。
子どもたちが真剣な顔で楽器を演奏する姿を見て、
「うちの子もあと数年したら、あんなふうになるんだな」
と楽しみにしていました。
ところが年中の時、主人の転勤が決まりました。
私たちは地方へ引っ越すことになり、幼稚園も転園せざるを得なくなりました。
新しい幼稚園は、前の幼稚園とはかなり雰囲気が違っていました。
お迎えに行くと、息子はいつも嬉しそうに泥団子を見せてくれます。
「見て!」
「今日はもっとツルツルになった!」
得意げに話してくれる姿はかわいいのですが、私は正直複雑でした。
前の幼稚園のような音楽指導やダンスの練習は見当たりません。
このままで大丈夫なのだろうか。
そんな不安を感じることもありました。
そして年長さんになり、学芸会の日を迎えました。
前の幼稚園で見た華やかな発表会を思い出しながら会場へ向かいました。
そこで披露されたのは、
「アンアンアン とっても大好き ドラえもん」
の歌とカスタネット演奏でした。
私は大きなショックを受けました。
前の幼稚園とのあまりの違いに、涙が出そうになったのを今でも覚えています。
もし転勤がなかったら。
もしあのまま前の幼稚園に通えていたら。
そんなことばかり考えてしまいました。
ところが周りを見ると、他のお母さんたちは感動して涙を流していました。
私はその時、その気持ちがよく分かりませんでした。
でも後になって気づいたことがあります。
息子が毎日夢中になっていた泥団子作りです。
実際にやってみると分かりますが、泥団子をきれいに丸くして、さらに表面を滑らかにするのは簡単ではありません。
根気も必要です。
時間もかかります。
子どもたちは試行錯誤しながら、自分なりに工夫していました。
今振り返ると、好きなことに時間を忘れて没頭する経験は、とても貴重なものだったのだと思います。
楽器やダンスの練習ももちろん素晴らしい経験です。
でも、自分のやりたいことを自分で考えながら追求する時間も、同じくらい尊いものだったのではないでしょうか。
当時の私は、それが見えていませんでした。
一方で、お勉強の方は家庭で少しずつ進めていました。
といっても、前回書いたように遊びの延長です。
ひらがな、カタカナに続いて、漢字にも触れ始めていました。
そしてもう一つ取り組んでいたのが計算です。
計算は積み上げの学習です。
できることが増えれば、その先へ進めます。
私は階段を一段ずつ上がるようなイメージで、少しずつ先の内容を取り入れていました。
ただし無理はさせませんでした。
難しすぎる問題は出さない。
負荷をかけすぎない。
できたという達成感を大切にする。
それだけは意識していました。
幼稚園から帰ってきて、お友達と遊びに行く前の少しの時間。
その短い時間だけ机に向かいました。
そして終われば思い切り遊ぶ。
そんな毎日でした。
今思えば、この頃に身についたのは知識だけではありません。
集中すること。
考えること。
できるようになる喜びを知ること。
そして学ぶことは楽しいという感覚です。
後に本格的な受験勉強が始まった時、勉強そのものを苦痛に感じなかったのは、この幼児期の積み重ねがあったからかもしれません。
当時はただ親子で楽しんでいただけでした。
でも振り返ると、それが受験勉強の土台となる大切な礎になっていたように思います。
灘中学合格までの道のり Vol.3|幼稚園選びで気づいた子どもの成長と学び
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